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鈍感力(渡辺淳一)| 書評・ブックレビュー

公開日: : 最終更新日:2017/01/26 書評・ブックレビュー

かつて小泉純一郎元首相で話題になった、「鈍感力」の元ネタです。

鈍感力を身につけましょう。鍛えましょう。

仕事でもプライベートでも、幸せになるために。

 

本家本元、今日は渡辺淳一さんの

「鈍感力」(どんかんりょく)

を紹介します!

 

文庫本の裏面には

シャープで鋭敏なことが優れていると世間では思われているが、本当にそうなのか?医師としての経験や作家としての眼差しを通じて、些細なことで揺るがない「鈍さ」こそ、生きていく上で最も大切で、源になる才能だと説き明かす。恋愛関係、夫婦生活、子育て、職場、環境適応能力、、、。様々な局面で求められる鈍感力とは何か。先行き不透明な原題を生き抜くヒントが満載。ミリオンセラー、待望の文庫化。

と載っています。

本書は元々、2005年から2006年末までプレイボーイ日本版にて渡辺淳一さんが連載したエッセイが書籍化されたもの。2007年に流行語大賞に選ばれました。書名であり、メインテーマであり、「鈍感力」は小泉純一郎元首相の揺るぎない態度の代名詞的にも使われたことで有名です。

小泉さんは「目先のことに鈍感になれ。鈍感力が大事だ。支持率が上がったり下がったりするのをいちいち気にするな」と発言して、話題になりました。なんでもこの一言で、鈍感力は増刷できたとか、、、。

 

目次は?

目次は以下のようになっています。

その1 ある才能の喪失

その2 叱られ続けた名医

その3 血をさらさらと流すために

その4 五感の鈍さ

その5 眠れる大人

その6 図にのる才能

その7 鈍い腸をもった男

その8 愛の女神を射とめるために

その9 結婚生活を維持するために

その10 ガンに強くなるために

その11 女性の強さ その1

その12 女性の強さ その2

その13 嫉妬や皮肉に感謝

その14 恋愛力とは?

その15 会社で生き抜くために

その16 環境適応能力

その17 母性愛 この偉大なる鈍感力

となっています。うーん、目次が機能的ではなく文学的(笑)。目次だけでも興味津々です。いつものように、印象に残ったところをピックアップしていきましょう!

 

鈍感という才能

一般的に「鈍い」ということは悪いことのように言われがちです。あの人は鈍いよ、と実際に言われたらその人は怒るでしょうし、その反面、あの人は鋭いよ、というのは褒め言葉になりえます。鈍感、鈍い。それらは否定的な意味合いを持つ言葉として受け取られます。しかし、鈍いというものには、効用というかプラスの面がある、というのが本書のテーマです。

鈍感力のある人は、叱られてもへこたれない

著者の渡辺さんは、鈍感くんと敏感くんという二人のサラリーマンをここでまず例に出してきます。ある人が、仕事上のミスで叱られるとします。しかも上役の機嫌がたまたま悪かったのでしょうか、こっぴどく人々の目の前でやられます。

そんな状況があったとして、一人の人は翌日ケロっとして出社します。周りの人々は心配していたけれども、本人はどこ吹く風で、「何かあったの?」とでも言うように、すっかり忘れて、いつも通りの仕事をしています。けれども、違う人が同じように叱られた場合に、それとは真逆の反応が起こり得ます。家に帰ってももんもんとして考え続けて、悩み続けて、「俺はダメだ、なんてことをしてしまったんだ」と思いつめて、翌日会社に来る時も気が重い、、、なんてことが起こってきます。

前者は鈍感くん、後者は敏感くんとでも名づけましょうか。

この二人を比べてみると、実は圧倒的に強くて頼り甲斐があるのは、前者の鈍感くんの方なのです。彼は良く言うならばタフでたくましい、しかし悪くいうならば「鈍感」な奴、「鈍い」奴、というように言えそうです。

しかし、この鈍い人の方が強い。生き残っていける。何があってもある種のたくましさを持ってサバイバルし、過去の些細なことを忘れていき、果ては将来出世していくかもしれません。

 

このような鈍感さの大切さは、何も仕事だけのことに限らず、友人関係や恋愛関係などにも重要です。ここでまた著者の渡辺さんは例を出してきます。才能のあった新人作家が、原稿を編集者に突き返されるたびに、真剣にひどく落ち込んでいた、というエピソードです。

実際は渡辺さんが今振り返ってみると、編集者が新人の原稿をつっかえすことなど、よくあること。日常茶飯事なのです。その時は憂さ晴らしにお酒でも飲んで、パーッと騒いで、また原稿を書き直していればよかったのです。しかし、その新人作家は、なまじ才能があったことが仇となりました。毎回毎回真剣すぎるくらいに落ち込み、ふさぎこみ、やがては新しく書く意欲すら失っていきました。

「なまじっか才能があり、自尊心の強すぎる人は、手に負えない」と渡辺さんは書いていますが、鋭いだけにもろいのです。そうしてこの新人作家は次第に作品を発表するチャンスを失い、文壇で名前をみることも少なくなり、消えていきました。まさにこれは、鈍感力・鈍さに欠ける、敏感くんゆえの悲劇だということです。

人間が成功するかしないかは、必ずしも才能だけではありません。それだけではなく、いい意味での鈍さ、鈍感さが必要なのです。才能は必要ですが、それを大きく磨いていくためには、時間がかかります。そのプロセスのためには、したたかさを生み出す鈍感力が基盤となるのです。

渡辺さんは「もしあの時の(新人作家の)彼に、鈍感力があったなら、、、」と想像します。きっとすごい作家になっていただろう、と。そして、これは文学の世界だけではありません。芸能界、スポーツの世界、いろいろな会社で働くサラリーマン。これらの中でどれだけ、鈍感力に欠けていたために花開くことができなかった人がいるのでしょうか?

鈍感、それこそまさしく才能であり、私たちを大きくしてくれるものなのです。

 

鈍感力を持った人の自律神経

本書の中で、「叱られ続けた名医」というエピソードが出てきます。手術のたびに、偉い大学教授の先生の執刀を助けるために助手としてサポートし、いつも執拗に叱られ続けていたS先生の話です。そもそも、人は叱られるのは嫌なものです。しかし、渡辺さんは自分よりはるかに数多く、そしてねちっこく叱られ続けているS先生を見て、なんとかわいそうな人だと思ってきました。

しかし、S先生はいつも「はいはい」というように、「はい」を2回言う返事を繰り返し、まったくこたえていない。それどころか数年経って気がついたことには、そもそも話をほとんど聞いていなかった。叱られてもまったく気にしない、手術後はリラックスして上機嫌。そして出世されて、ご高齢になってからも健康そのものである、という言わばスーパー鈍感力ドクターのエピソードです。

そして渡辺さんが言うには、鈍感力は自律神経の働きにも効果を発揮する、ということです。自律神経は交感神経系と副交感神経系の2系統からできており、この二つは相反するように働きます。おおざっぱに言えば、交感神経系は緊張して血管を狭める方向に働き、逆に副交感神経系はリラックスして血管を広げる方向に働きます。

では、どういうときに交感神経系が優位になるか。それはネガティブな感情が働くとき、すなわち緊張・不安・イライラ・不快感・怒り・憎しみ、そして寒さを感じるときです。逆に副交感神経系が優位になるときというのは、穏やかでリラックスした状態、楽しいとき・嬉しいとき・気分が爽やか・周囲が温かいときなどです。

では、血管を広げて、血液サラサラ、副交感神経が優位なリラックス状態になるにはどうしたら良いのでしょうか。答えは自ずとわかってきます。鈍感であれば良いのです。鈍感力を持った人の自律神経は、いつも健全に保たれて、身体まで健康になっていくのです!

 

眠りにも影響する「鈍感力」

鈍感力の効能の中でも、特筆すべきは「よく眠れること」です。睡眠に問題がある、というのは現代人に共通する悩みです。よく眠り、すっきりと起きられれば、人生の問題などほとんどは解決します。睡眠なくして、人間が健康であり続け、人間関係を良好に保ち、仕事に打ち込むことはできません。睡眠の質を向上させる「鈍感力」は、まさに現代人に必須の力と言えます!

世の中には、不眠とはまったく縁がない、快眠そのもの、よく眠る人もいます。車の中でも電車でも、あっという間に寝てしまう。まくらが変わっても、人と一緒の旅行でも、平気です。そういう人は、健康で、肌ツヤもよく、見かけも実際の年齢より若いことが多いのです。鈍感力は、外見の美さえ生み出してしまうと言うのです。

 

恋愛と結婚にも効く「鈍感力」

渡辺さんは、恋愛にも結婚生活にも「鈍感力」が大切だと説きます。恋愛において男性が女性に好意を抱くとき、鈍感であることは実は武器になります。鈍感力と誠実さがあれば、鬼に金棒とすら言うのです。男性がアプローチしても、女性はすぐには答えてくれません。

渡辺さんがいうには、男性はとかく性急で、なおかつたった一度の拒絶で心が折れて容易に諦めてしまう、というのです。そこで役に立つのが、鈍感力です。一度や二度断られても、まったくへこたれない、そもそも何も感じていない。その鈍感力こそが、結果的に忍耐強く女性にアプローチさせるというのです。

結婚生活においても鈍感力は発揮されます。そもそも、結婚生活の中で夫婦喧嘩のタネになるようなものは、ささいなどうでもよいことが多いのです。筆者は「歯磨きチューブ」をお尻から綺麗に押していくダンナさんか、無頓着に押していく奥さまか、という話を例にあげています。本当に、どうでもよいことが夫婦喧嘩のタネになりえます。しかし、鈍感力があれば、そんな無意味な戦いを起こすことなく、結婚生活を維持していけるのです。

 

嫉妬や中傷、嫌がらせの中を生き抜いていく

人からの嫉妬や中傷、嫌がらせの中をどう生き抜いていくか?というなかなかシビアな問題も本書では扱っています。友人や会社の同僚などによる嫉妬・中傷、嫌がらせは、本当に辛いものです。

これこそまさに人生最大の苦痛、などと思い詰めてしまうことも少なくありません。しかし、こんなときにこそ必要とされるのが鈍感力だと筆者は説きます。鈍感力によって、これらのことも逆にプラスに転化して、前向きに生きていきましょう!

 

嫉妬の対応「妬まれることは幸せ」

一般に女性の方が男性より嫉妬深いと言われたりしますが、実はそんなことはありません。男性は恋愛関係ではそれほどではないかもしれませんが、話がこと仕事や能力のことになると、大変嫉妬深く、陰湿な行動に出ることも少なくありません。中傷・悪口によって、有能な人材が貶められる、というのは本当によくある話なのです。

そして悪口を流された方の人は、ついかっとなって相手をうらみ、相手と同じように悪口を触れ回って、互いに戦うこともありえます。しかし、渡辺さんは決して早まってはいけないとアドバイスします。そこで大切なのは、相手をまったく無視すること。普通は嫉妬や中傷をする場合、する人はされるほうよりも状況が悪い場合が多いと言います。

たとえば会社でいうならば、嫉妬され、悪口・中傷をされてしまう人は、仕事ができる人です。そして出世しようとしているのです。嫉妬する方の人は、下にとどまって、くすぶっているのです。だからこそ、嫉妬するのです。妬まれるのはたいがい幸せなほうであり、妬むのは屈折してモテないからです。

こう考えますと、嫉妬されても中傷されても、傷つかなくなってきます。渡辺さんいわく、

「ごめんね、俺ができすぎているので、君をイライラさせて。君が妬む気持はよくわかるし、大変だと思うけど、ほどほどにしてね。」

こう思えるようになると、大丈夫と言うのです。相手を恨むどころか、むしろ逆に嫉妬してくれた人に感謝した方がよいとも、言っています。嫉妬する人は、嫉妬される人以上に、悲しい人なのです。

「ありがとう、いつも嫉妬してくれて。おかげで俺はますます頑張るから、今後ともよろしく嫉妬を続けてね。」

ものは考えようで、この一言が言えたら勝ちです。ここまで言えるようになるために大切なのが、鈍感力です。多少嫌なことを言われてもされても、ぴりぴりしない。どうして相手がそういうことを言うのか見抜いて、相手の気持を察してやるくらいの余裕をもつ。広い心の鈍感さで生きていく

皮肉への対応も同じです。嫉妬への鈍感さと共に、皮肉にも鈍感であることが重要です。皮肉など気にせず、気付いても気がつかないふりをして、そのまま皮肉を受け取っていく。自分で決めた方向には、周りの目やささいな噂や中傷・皮肉などまったく気にせず、完全と突き進む。

余計な声が聞こえてきても、「我関せず」として、堂々と歩んでいく。それこそ、鈍感力であり、大きなことを成し遂げる原動力なのです。

 

人の不快な点を気にしない

職場では、いろんな人がいます。顔を突き合わせて毎日一緒に働かなければならない同僚に、奇妙なくせがあったらどうでしょうか。香水の匂いが気に入らなかったり、貧乏ゆすり・爪を噛むくせ、話し方・物事の進め方、、、細かいことを言えば、当人はまったく気にしていなくても、周囲は不快に思う、ということはいくらでもあるのです。

こういうときに必要になるのが鈍感力です。さまざまな人のいろんな癖や態度が気になる人もいれば、まったく気にならない人もいます。気にならない人は得です。明るくおおらかな人は得です。鈍感な人は、得をするのです。人のさまざまな不快さを無視して、鈍感を貫ける人が、集団の中で生き残っていける人だと言えます。

 

まとめ:

この本は、本当に読んで損はない。鈍感力の大切さに気がつきます。

鈍い・鈍感・感じない・考えていない。

それを褒め言葉、ポジティブな要素として考えたことがありませんでした。むしろ、全てその逆であろうとしてきたような気がします。しかし、鈍感こそタフネス。鈍感こそサバイバルへの道。本書は、ユーモアあり、わかりやすい例えのエピソードあり。なんといっても文学者、表現が豊かで巧みです。そして教訓は豊か。さすがはミリオンセラー、おすすめです!

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